ただ一緒にいただけ

そこにいてくれさえすれば

いちばん好きな場所


戻ってきたあの日、お仕事を抱えて戻ってきてくれたあの日、そこがどんな場所なのか、どんな世界なのか、どのようにしてその場所に立とうとしているのか、何かひとつでも知り得ないかと、演出家さんのツイッターやブログ、フェイスブックを過去の過去まで遡って読んだ。

そこに綴られた言葉の中から、これ、ひろちゃんのことかなぁ??と想いを馳せて、そうであるのなら、って。







お稽古が始まって、公式ツイッターや共演者の方たちのSNSにのせられたひろちゃんは、知らない場所にひとり、見慣れない方たちの中にひとり、ひろちゃんは新しい場所にいた。

初日が近づくにつれて、更新が増えたブログ。

きっと楽しみなんだろうなぁと、きっと緊張していて、すごく緊張していて、でもきっとそれすらも、楽しんでいるのだろうと。初日までの日々を噛みしめるように、1日1日を大切に、ひとつも残さずひとつでも多く得られるように、焦るけど焦らないように、どうにか気持ちを落ち着かせてじっくりゆっくり、着実に歩みを進めようとするそんなひろちゃんを感じて、ひろちゃんを好きになったことに間違いなどひとつもなかったと、ひろちゃんがいてくれて幸せだと、また好きの上に好きを重ねて。


どきどきして迎えた初舞台。「ボクが死んだ日はハレ」




小さな場所だった。とても小さく閉ざされた空間。まっくらで、本当に何ひとつ見えない中、目が暗闇に慣れるその前に、森さんの演奏する音楽とともに、下手床から上手天井へ天の川のように飾られた緑のイルミネーションが灯った。

中央に向かい丸く並べられた6つの椅子。下手奥の扉から出演者が舞台へあがる。一番最初に出てきた人。すぐに分かった。暗くてよくは見えなくて、でも、ひろちゃんでしかなかった。白いシャツにグレーのパーカーを羽織って黒い細身のパンツをはいた、細くてなのに肩幅が広い人。少しだけ硬そうででもやけにふわっとした髪の毛。所々骨張った輪郭。客席に背を向けて座ったヒロキくん。

それぞれが椅子に座り、ハミングが始まる。お互いの顔を見ながら、お互いの音に寄り添うように、重ねるように、声だけで奏でられた音。背を向けて座っていたヒロキくんとはるさんが振り返り、横向きに座っていたりんこさんと小野さんは顔を正面に向け、6人全員が客席を見る。振り返ってお顔を客席に向けたヒロキくんは、口元を緩ませてた。全然抑えきれてない嬉しそうに緩ませた口元。見覚えのあるその口元が、そのお顔が、あまりにも嬉しくて、やっっっっっと会えたという気持ちと、楽しみにしていたんだろう楽しみにしてくれていたんだろうことが、嬉しくて嬉しくてほとんど反射的に涙が落ちたところで、やさしく重なった6人の声が「もう泣かないで」と歌い、もういろんなものがぶわっと込み上げた。立ち上がった6人は、歌いながら前にでてきて横一列に並ぶ。堂々とそこに立つひろちゃんをもっとよく見なければ、ちゃんと見なければ、と思いつつ、滲む涙が邪魔で邪魔で、
ひろちゃんだぁ、と思うその側で、ただ森さんの伴奏と6人の声だけで奏でられた音楽に包み込まれたその時、開始5分できっとここがとても素晴らしい場所であることに気づいてしまって、ひろちゃんがやりたかったことはこれかぁ、と、ひろちゃんが好きな場所はここかぁ、と、涙が止まらなくなった。

優しい優しいその歌を歌うひろちゃんのお顔がこれまでないくらいに、いつだって優しいけれど、これまで以上に優しくてすごく満ち足りたお顔をしていて、あぁ、幸せなんだなぁって思った。ここに立つことができて、ひろちゃんはきっと本当に幸せなんだ。見覚えのある表情と見たことのない表情が入り混じって、やっぱりだいすきだぁという気持ちと、ほんの少しだけ寂しくてなのにその何十倍も何百倍も嬉しくて、やっぱりもっともっとだいすきじゃんって気持ちで胸がぎゅーってなって、涙が溢れでる。
最初っから泣きっぱなしでこれ持つかなぁと一瞬我に返ってぼんやり思いながら、物語が始まる。





時々英語の混じるハツラツとしたキャラクターが強烈なミミ、感情的で一見キツそうだけど物語が進むにつれて見え隠れする優しさがあったかいSHOKO、自信なさそうでだけど本当はきっと芯が強いかおり、かつては大スターだった3人。人気は落ち着いてしまって、同時にそれぞれ上手くいかないことや悲しい現実を抱えて、そんな時に結成されたグループ、ハレバレハレルヤ。3人と、プロデューサーのすみ絵、SHOKOのマネージャーの篠原の5人に起こった小さな物語。

あらすじは、最近よくレコーディング中に眠るように意識を失うミミ。身体に異常はなく調子が悪いどころか最近幸せそうなミミは、一年前に息子を亡くしていてそれを受け入れられないままに一周忌を終え生きる希望を失っていたところで、ひょんなことで夢なのか現実なのか息子のひかるに会うことができるようになる。その事実をミミの口から明かされた4人は、信じるか信じないか戸惑い、結局馬鹿みたいにミミの言うことを信じることで、ミミを過去の世界から救い出そうとする。
ひろちゃんは息子のひかる役。母の現状をよく理解し、母の中でどこまでも繰り返される過去の時々に付き合いながら、生きている人と生きていってほしい、と願い、ミミを連れ戻そうとする4人に協力したいと申し出る。第6感の優れたかおりの身体を借りてかおり以外の3人ともコミュニケーションをとるひかる。ひかるはミミの意識の中で、自分が死んだことも全て抱えて生きて、どんな日だってハレの日だと思ってほしい、自分はあなたの息子として生まれてきてよかったと、伝える。別れを告げ去ろうとするひかるを追いかけようとするミミを、4人が優しい言葉を沢山沢山かけることで、とどまらせようとする。それはもうラスボスみたいにしぶとく手強い相手だけれども、4人の言葉(と食べ物への欲w)が少しずつミミに響き、最後、ひかるの、「ボクは沢山無条件の愛をもらった。」「ハレバレハレルヤがんばって。」という言葉で、現実に戻っていくミミ。
生きてる人にも死んでる人にも沢山愛されていることを実感し、歌いたい!!とハレバレするミミ。そしてひかるがどこかで見守る中ハレバレハレルヤのファーストステージが行われ、幕が閉じる。







物語が本当にしんどくて。誰にだって最期のときがあって、誰にだってそれを悲しんでくれる人がいる。誰かは誰かの大事な人で、その誰かも誰かの大事な人。正直に生きることは、悲しいことも辛いことも真正面から受けとめなきゃならなくてしんどいけど、その分あの人たちは、弱いからこそとても強くて優しくて、誰かのために必死になれる人たちだった。生きてる限り、出会う勇気と別れる勇気、その勇気からは逃れられなくて、時にそれはどうしようもなく悲しいものだったりするけれど、それは自分次第でとてもあったかい巡り合わせにもなるんだなぁと。沢山悲しい涙が流れるし切ない涙が流れる。やりきれなくてどうしようもなくて、なのに、ずっとあったかい。ずっと優しくてずっと可愛くてずっと愛しくて。ずっとずっと素敵だった。最初から最後までどこを切りとっても好きなシーンばかりだった。





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最後に6人で歌う曲は、明るい曲調に変わっていたけど、初めに歌ったあの優しい歌。はじまりのララバイと、終わりのファンキーララバイ。

楽しそうに歌うひろちゃんは、あの時と何も変わらないひろちゃんだった。つい最近のことだったはずなのに、もうずっとずっと、その姿を見たくて、見れなくて、もう見れないと思って、繰り返し思い出して。そうやって時間が経っていたから、それはすごく昔のことのようで、何年も前のことのようで、懐かしくて懐かしくて、嬉しくて。ちゃんと見たいのに、ひとつだって見逃したくないのに、後から後から追いかけっこみたいに涙が、次から次へと、みるみるうちに溢れ溢れてきて。エアギターみたいな振りするひろちゃん、隣の人と目配せするひろちゃん、笑い方とか、身体の傾け方とか、揺らし方とか。ちゃっかり曲中にフリーダンスの時間までもらって、床に手ついた時に手にくっついたキラキラを隠し持っていて、後になって両手をふわって広げてキラキラを舞わせるひろちゃん。見たことありすぎる。ずっと見たかった。ずっと会いたかった。ずっとずっと会いたくて仕方なかったの。もう未練とかは関係なくて、本当に関係なくて、でもそれでも、あの時だいすきだった人がもう会えないと思っていた人が目の前にいて、本当にいて、「そこにいてくれること」、がただそれだけで、嬉しすぎて幸せすぎた。






物語自体がそれだけで十分心に刺さる、響く、ものなのに、それ以上に気持ちが入ってしまうのは、
そこにいるのにここにいないって、なんでなのって、ひろちゃんがいなくなったことを受け入れられなかった日々や、ひろちゃんがいたあの時々を繰り返し何度も何度も思い出した時間があったから。別れる勇気と出会う勇気は、拡輝くんと別れる勇気、ヒロキくんに出会う勇気に置き換えられるものだったから。もちろんそんなことは関係せずに物語に集中できるほどに全部が素晴らしいもので、だけどそれでも、どうしても所々でリンクしてしまって思い出してしまって、押し寄せてくる気持ちがあって、その度にぎゅーってなるから、余計に気持ちが入り組んでしまう。

それはまだ少ししんどくて、でも、そのおかげで、前を向いた気持ちが確かにあって、多分私だけじゃない、ひろちゃんを好きでいる沢山の人がきっと救われて。デビュー作がこれって、ボクが死んだ日はハレって、こんな巡り合わせってあるんだなぁって、こんなことってあるんだなぁって思った。

ずっと感じていたのだけど、ひろちゃんが選び進んでいく道は、偶然のようでいつも偶然なんかじゃない。ひとつとして途切れなくて全部つながってる。ひろちゃんの生き方がきっとそうしてて、だから今があって、きっとこれからもそうで。ひろちゃんが進むと決めた道の先には、いつも最高の今がある。どんなことがあったって、何を選ぼうと何処へ行こうと、過去の色んなものを引き連れて結んで今に繋げて、そうやって、ひろちゃんは今を最高の「いま」にできる人。そうゆうひろちゃんを好きになったから、私にも「いま」があるし、きっとこれからだって、何があっても結局何度も何度も満たされてやっぱりすっごくすきだー!幸せだー!って思うことになるだろうなぁって思った。









劇場を出て、色んな気持ちで心がもういっぱいいっぱいで、でも、いちばん思ったのは、いちばんに出てきた言葉は、ひろちゃんがいてくれれば、他にはもうなんっっにもいらないなぁって。


出会ってしまってからずっと大好きだった。ひろちゃんしか見てなかった。ハコがすきで、ハコの中にいるひろちゃんが好きだった。ハコが壊された時、ひろちゃんのことを個人としてこれまでと同じようにこれから先もずっとだいすきでい続けられるのか分からなかった。いつかハコが壊されてぽっかり大事なものを失くした時、戻れる場所があるように、他の何かでごまかせるようにって、予防線張って色んなものを手放せずにいた。すがれるものを失くさないように、未練だってずっと大事に頑なに抱えて、忘れたくなくて、縛られて、譲れないものがあって、色んなものを捨てきれずにいた。

思いがけない形で私の理想としていたハコは壊されてしまって、ひろちゃんだけが一人になったわけだけど、こうなってみて、そして、一人で活動するひろちゃんを見て、そしたら、こんなにだいすきだった。未練なんて少しも感じずに、いまそこにいるひろちゃんがただ好きで、こんなに幸せだった。不安だった日も、絶望した日も、もうひろちゃんに会えないのかもしれないと思った日も、何してるのか分からなかった日も、違う名前で戻ってきてくれた日も、久しぶりにお顔を見せてくれた日も、お稽古が大変そうな日も、立ち止まって考えを巡らせている日も、なんだか楽しそうでなんだか幸せそうな日も、緊張しながら迎えたはじめましての日も。どの瞬間だって、変わることなく、ひろちゃんのことがだいすきでした。それがわかったら、もう何も怖いものなんてなくって、好きでいることは明白で、きっとこれから先もそうで、それならもうなんにもいらないなって。予防線はる必要も、未練に縛られる必要もなくって。劇場から駅までの道を歩きながら、ひろちゃんがそこにいてくれたらもう他にはなんにもいらない、って、心の底から思った。





そこというのは、今までとは全然違う場所で、でもそこは今ひろちゃんの「いちばん好きな場所」で。

ひろちゃんが「いちばん好きな場所」って教えてくれた時から、私もそこを好きになれるかなって、なれたらいいなって思ってて、いざそこに居合わせてみたら、そこは思った以上にすごい場所だった。眩しくて揺さぶられてアツい想いが飛び交って波打つように動く、そうゆう場所だった。やり直しも撮り直しもなくて、CGとかそんな高度なものもなくて、全部今発せられた言葉や音でそれが重なって今があって、生のもので、そうゆう場所なんだなぁって、すごい場所に出会ってしまった、出会わされてしまったと思った。
大きな舞台装置も小道具も派手な照明も派手な演出もない。かっこよさなんていらない。ただ、ひとりひとりが身体ひとつで出すエネルギーを重なり合わせて作る場所。こんな力強い場所があるなんて知らなかった。

ここがひろちゃんの好きな場所、ひろちゃんが生きていこうと決めた場所。こんな素敵な場所で、これから毎回違ったヒロキくんに会える。きっと毎度毎度驚かされる。ひろちゃんなのにひろちゃんじゃない!ってきっと毎回言う。きっとこれから何度でも出会って何度でも好きになる。

それが何より嬉しくて幸せに感じます。













はーーーとりあえずはお疲れさま!不安だったよね。そりゃそうだ。ひとりきりで、大きな大きな、大きすぎる一歩を踏み出そうとしてたんだもん。踏み出したんだもん。

沢山沢山拍手を贈りたかった。伝われ伝われと思いながら、これ以上ない程手を叩いたんだけど、ひろちゃんにその音はその気持ちは少しでも届いた?ヒロキくんの初舞台が本当に素晴らしいもので、確かにハレの日で、本当によかったなぁって、勝手に嬉しく思いました。












やっぱりひろちゃんのものだった「俺も命賭けます」の言葉。そこで生きてく覚悟の言葉。
あのときはまだ悲しくて悲しくて、だけどその言葉がひろちゃんのものなら、そんな覚悟で飛び出したのなら、ちゃんと応援したいと思った言葉。きっとその言葉の通り、命かける思いで、日々を積み重ねて、飛び出したあの日を、踏み出したその日を、ハレの日にしてくれたひろちゃん。命をかけてそこにいようとしてくれるひろちゃん。そこで生きるひろちゃんにこれからも何度だって出会いたいです。







今度はスクエア荏原 ひらつかホールで。また新しいひろちゃんに出会えるのが楽しみです。







今がいちばんだと思わせてくれて、これからもきっといちばんだと信じさせてくれて、ほんとにほんとにありがとう。

やっぱりだいすきだから、きっとこれからだってだいすきだよ!